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こころ と からだ 第二章

1 : :04/03/07 04:22 ID:???

前スレ
こころ と からだ
http://ex2.2ch.net/test/read.cgi/entrance/1059662141/

続き書いてキボンヌ・・・



2 :覚羅 ◆kaGurADJ7E :04/03/07 04:22 ID:???
んーーーーー

3 :名無しさん?:04/03/07 04:24 ID:???
●ないと読めないから終了

4 :名無しさん?:04/03/07 09:10 ID:???
お?

5 :名無しさん?:04/03/07 12:18 ID:???
誰かあらすじ書いてよ

6 :名無しさん?:04/03/07 14:42 ID:???
http://ruku.qp.tc/dat2ch/0403/07/1059662141.html

読めないdat落ちスレでhtml化してもらった。

7 :名無しさん?:04/03/07 20:00 ID:???
はたして本人はきづくだろうか。。ほす

8 :名無しさん?:04/03/08 11:06 ID:???
どーだろ? どーなの?

9 :名無しさん?:04/03/08 21:08 ID:QRhTlFyq
age

10 :キナリ.mr5 ◆LOTUS/ABW6 :04/03/08 22:21 ID:???
>>6
3日に一度ぐらいの頻度で見てたから肝心の最後の方が抜けてる・・・

>>5
幼馴染のSが死んだが、生前Sと何かあったというクラスメートがしゃしゃり出てきた

11 :名無しさん?:04/03/09 02:15 ID:C9JVP2Zb
前スレがdat落ちしたのを見て前スレ主はがっかりしたろうな・・・(´・ω・`)

12 :名無しさん?:04/03/09 02:26 ID:???
あげ

13 :ななし ◆ZdSEXYBMWc :04/03/09 03:28 ID:???
続きキボンー。
再開を心からお待ちしてます。

14 :名無しさん?:04/03/09 09:47 ID:???
もともとやる気なかったんじゃないか?
保守も保守嵐に頼ってたみたいだし

15 :名無しさん?:04/03/09 11:16 ID:???
やる気なしで7ヶ月も続くかね・・・?

16 :名無しさん?:04/03/09 11:19 ID:???
どっかからの転載じゃなかったの?あれ

17 :名無しさん?:04/03/09 19:35 ID:???
ho

18 :名無しさん?:04/03/10 15:36 ID:???
生きるために・・・ッ!あげ・・・ッ!!!

19 :名無しさん?:04/03/11 08:32 ID:???
背後から声をかけられた。体育館の出口をくぐってすぐだった。驚いて振り向くとSではなく、以前のクラスメイトの一
人だった。聞いた?といきなり彼女は言った。私が何か言う前に彼女は言葉を続けた。今日のあれ、行くんでしょ?
何時だったっけ?確か、6時。と私は答えた。

20 :名無しさん?:04/03/11 08:45 ID:???
彼女はだいぶ舞い上がっていた。とにかく誰かと話したくて仕方ない風で、しかも人の話が聞きたい様子ではなかっ
た。私の返事も黙殺され、彼女の勢いにおろおろしている内に、私が集合時間の30分前に彼女を迎えに行く約束が
取り付けられてしまった。じゃあよろしくね、と言い残して彼女は他の話し相手を探しに私の前から立ち去った。

21 :名無しさん?:04/03/11 08:47 ID:???
前スレを読んでくれた人、保守してくれた人に感謝。
このスレを立ててくれた人、期待してくれている人に感謝。

22 :名無しさん?:04/03/11 09:02 ID:???
うお、すごい。来たよ!ミラクル!

23 :名無しさん?:04/03/11 12:57 ID:???
>>21
毎回空保守のほうが読みやすいので書かなかったけど
今回だけは書かせてもらおう 乙

24 :ななし ◆ZdSEXYBMWc :04/03/11 15:50 ID:???
>>21
ああ、邪魔だとわかっていても伝えたい。
がんがってください!!

25 :名無しさん?:04/03/12 00:12 ID:???
名無しと名乗りながら知障丸出しの鳥つけてるだけならまだしも
>>24みたいな恥ずかしいレスを臆面もなく書き込める自意識過剰なクソは即刻死んで欲しい


26 :名無しさん?:04/03/12 01:04 ID:???
キタ━━━━(・∀・)=○)´Д`(○=(・∀・)━━━━━!!

27 :名無しさん?:04/03/12 08:58 ID:???
何だってみんな自分の好き勝手に行動して、少しでも申し訳なさそうな素振りも見せないんだろう、と思った。卒業
式だったから、特別な日だったからなんて理由で、他人の都合を考えない行為が正当化されるとでも思っているの
かしら?そんなことを考えてみても、すでに決まってしまった予定を変更するには至らなかった。

28 :名無しさん?:04/03/12 09:10 ID:???
じゃあ自分はどうなんだ?と自答ぜずにはいられなかった。そしてそれは多分、私が最初にSの問題で失敗したとき
からずっと続いていたことだった。それはだんだんと私の中で大きくなっていって、とうとう卒業式という特別な日に
計画した最後のチャンスすら潰してしまおうとしていた。

29 :名無しさん?:04/03/13 01:17 ID:???
 

30 :名無しさん?:04/03/14 01:24 ID:???
自分で考えて行動しようとしても、もう私は私自身の考え方を信用できなかった。そして何度目かの、今回の計画の
中止を真剣に考え始めた。中止、と言うよりもどっちかと言うと、計画そのものが最初からなかったことに、私は最初
からそんなこと考え付きもしなかった、ということにしようとしていた。

31 :名無しさん?:04/03/14 01:40 ID:???
Sとの溝を広げることにならずに済んだ。生涯に残るような大恥をかかずに済んだ。Sの古傷を無駄に掻き乱して、S
の新しい生活を邪魔せずに済んだ。などと、私が計画を忘れることで受けられるメリットをいくつか無理矢理挙げて
みたりしたけれど、私が感じていた敗北感は少しも和らがなかった。

32 :名無しさん?:04/03/15 01:14 ID:???
 

33 :名無しさん?:04/03/15 09:14 ID:???
当初の計画は忘れる。忘れて考えないようにした後、私の直面している問題は、例の強引なパーティ^の出席の約
束と、それに喜んで参加する元クラスメイトの一人を時間前に迎えに行くことだった。あまり積極的に荷担したいと
は思わなかったけど、それをむげにするのも躊躇われた。

34 :名無しさん?:04/03/15 09:23 ID:???
もし私がSとの問題を抱えていない状態でパーティーの提案を聞いたのなら、私も喜んで参加する立場の人間にな
ったかもしれない。特別な日だという高揚感と、最後だというセンチメンタリズムを味わいながら、後々振り返ってみ
れば甘美な思い出として私の脳裏に記憶されたかもしれなかった。

35 :名無しさん?:04/03/16 07:21 ID:???
けれどそのときの私にとって、パーティーの開催は苦痛でしかなかった。かなりの自己嫌悪に陥っていたせいなの
か、私を取り巻く様々な問題全てが疎ましく思えた。できれば誰からもそっとしておいてほしかったけれど、新たな
問題を抱え込んでしまったのは全て私自身の不甲斐なさから来たものだった。

36 :名無しさん?:04/03/16 07:36 ID:???
はっきりと断ればよかった。どうせみんな浮ついていたのだから、適当な理由ですんなりと私を解放してくれるはず
だった。甘美な思い出を自分から手放してしまうのは少し残念だったけど、そもそも最初からSとの問題を抱えてい
た私が、この特別な企画を綺麗な思い出として記憶できるはずはなかった。

37 :名無しさん?:04/03/17 08:34 ID:???
多分私が過去にやってしまったごく小さな失態の報いか、もしくはそれらが限りなく集まって現れた結果のような気
がしてならなかった。まるで乗車券をなくしたまま乗り続けた列車が終点に着いたとき、初めて切符をなくしていたこ
とに気付いて慌てふためいているようなものだ。

38 :名無しさん?:04/03/17 08:43 ID:???
そうは言っても、一度了承してしまったことを今更訂正して場を白けさせるのはまずいと思っていたし、ほんの数時
間彼女らに合わせればそれで十分だろう。私次第だけど、上手くやれれば今からでも後々のいい思い出を作れる
かもしれない。こうして無理矢理気味に気力を高めようと奮闘しながら、私の足は元クラスメイトの家に向かっていた。

39 :名無しさん?:04/03/18 07:39 ID:???


40 :名無しさん?:04/03/19 08:45 ID:???
彼女は私を玄関先で40分も待たせた後、悪びれた様子もなく靴を履きながら言った。さ、行きましょ。私はできるだ
け何も考えないようにしながら、元クラスメイトの隣を歩いた。その最中、彼女はずっと喋っていた。ときどき、話を聞
いていることをアピールするために入れる私の相槌が、あろうとなかろうと関係なさそうだった。

41 :名無しさん?:04/03/19 08:56 ID:???
会場はクラスの誰かと親戚らしい人が経営するイタリア料理のレストランだった。車が5台も入ればもう満杯になる
ような駐車場に、知った顔ぶれがちらほらと集まっていた。私達が到着した時点ですでに30分以上も遅刻だったけ
ど、驚いたことにまだ来ていない者が随分いたようだった。

42 :名無しさん?:04/03/20 09:02 ID:???
7時過ぎてからようやく人が集まり、私達はぞろぞろと店内に入っていった。集合時間より1時間も経過してしまって
いたことについては考えないようにした。私がそんなことに気をまわしても、どうにもならなかったのだから。単にみ
んながルーズだっただけでなくて、あとから知ったのだけど店側の準備なんかも手間取っていたらしい。

43 :名無しさん?:04/03/20 09:15 ID:???
クラス委員だった男子が無理矢理みんなの前に立たされて、開催の挨拶をした。変にかしこまった型通りの挨拶に
周囲から小さな笑いが漏れた。最後に彼が乾杯、と叫ぶと、みんなそれぞれ手にしたグラスを掲げて、低い声で彼
の言葉を繰り返した。そこでもまた小さな笑い声が起こった。

44 :名無しさん?:04/03/21 10:27 ID:???
 

45 :名無しさん?:04/03/22 09:04 ID:???
椅子は全部どこかへ片付けていくつかのテーブルが中央に集められ、その上にのせられた様々な料理を各々が自
由に取る、という形式の立食パーティーだった。入ったときそんなに広くないな、という印象を受けたけれど、クラスメ
イト全員が入っても各自勝手に動き回れる余裕があった。

46 :名無しさん?:04/03/22 09:16 ID:???
みんなそれぞれ料理を取りながら思い思いの人達とグループを作り、そのグループごと移動し、あるいは他のグル
ープが来るのを待っていた。パーティーに確固とした進行プログラムなどはまるでないらしく、乾杯の後から唐突に
始まったその混沌とした状況を誰もが楽しんでいるようだった。

47 :名無しさん?:04/03/23 08:42 ID:???
私もいつのまにか手近にいたグループに吸収されていた。あっちこっちに顔を挟む回遊魚の群のようなグループを
待つ側のグループだったのがせめてもの幸いだったかもしれない。そのときの私は、店内のあちらこちらで気の利
いたやりとりが出来る自信がなかったから。

48 :名無しさん?:04/03/23 08:55 ID:???
私は基本的に笑顔を絶やさぬようにしていればよかった。ややこしいことは近くの誰かが私の代わりに全部やって
くれた。そして訪れる側の誰もが、私が作ったような笑みを浮かべているだけだということに気付きもしなかった。こ
の特別な空気の中で、誰が腹の中で全然違ったことを考えていたとしても、それを表沙汰にしてその協調感を邪魔
しなければ、多分それでよかったのだろう。

49 :名無しさん?:04/03/24 05:30 ID:???
age

50 :名無しさん?:04/03/24 08:46 ID:???
けれど、時間が経ってどんどん料理が減っていき、みんなの発する声が次第に大きくなっていくに従って、私の中にも
この妙な一体感を楽しんでいる部分が出来つつあった。恥ずかしいくらいに青臭いフレーズが頭に浮かんだりして、徐
々に自分から流れに身を任せようとしていることに気付いた。

51 :名無しさん?:04/03/24 08:56 ID:???
安直な方向に逃げ込もうとしている、という自覚はあったけど、じゃあ頑なに安直でない方向を維持していれば何か
がどうにかなるのか、と考えてもどうなるものでもなかった。未だに引っ掛かりを感じるのは、もちろんSとの問題が
不明瞭な結末になってしまったことにあったけれど、それすらも流れに逆らえず死に絶えようとしていた。

52 :名無しさん?:04/03/25 10:01 ID:???


53 :名無しさん?:04/03/26 08:34 ID:???
実際結構楽しかった。他のクラスメイト達に比べれば随分控えめだったかもしれないけれど、少なくともSの問題に
ついてあれこれ考えを巡らせているときよりもずっと楽しかった。いや、楽しかったと言うよりもただ単に気楽でいら
れただけかもしれない。

54 :名無しさん?:04/03/26 08:44 ID:???
たとえそう遠くない将来に、またその問題がぶり返してきて嫌な気持ちにさせることがあるだろうけど、そのときはそ
のときの私に任せてしまえばいい、と思った。今はもう問題解決の糸口を見失ってしまってもいたし、ここからわざと
らしいくらい劇的にどうにかなる可能性もまるでなかったのだから。

55 :名無しさん?:04/03/27 07:42 ID:???


56 :名無しさん?:04/03/27 17:18 ID:s56ewgPv
56

57 :名無しさん?:04/03/27 17:18 ID:s56ewgPv
56

58 :名無しさん?:04/03/28 07:21 ID:???
気が付くと店内の人の流れが大人しくなっていた。料理や飲み物を取りに動いたり、グループからグループへ1人2
人移動することはあっても、グループごとにまとまって動くのがなくなっていた。それぞれ一番落ち着くべきところに
落ち着いて、今度はグループ内でのお喋りを楽しみ出したようだった。

59 :名無しさん?:04/03/28 07:32 ID:???
話題は新しい高校生活について、中学校時代の思い出話、先生や同級生達の噂話など、各々のグループが思い
付くままにそれぞれの中での会話を楽しんでいた。ときどきとんでもなく大きな声を出して、他のグループの人達の
注目まで集めてしまうそそっかしい男子なんかもいた。

60 :名無しさん?:04/03/29 01:31 ID:???
age

61 :名無しさん?:04/03/29 09:14 ID:???
私がいたところは私を含めてせいぜい4、5人のグループだったから、どうしても会話に参加しなければならなかっ
た。とは言っても、話題は全てグループの面々が用意してくれたので、あまり積極的になれなかった私でも相槌を
打ったり、簡単な答を返すだけでよかった。

62 :名無しさん?:04/03/29 09:25 ID:???
そしてたったそれだけでも、私は随分気を紛らわせられた。感傷的なものをみんなと共有できる余裕すら出てきた
と思う。面白い話にみんなで笑い、笑った後に少し悲しくなった。その隙間を埋めようとするかのように、次々に誰
かが新しい話題を持ち出してくれた。

63 :名無しさん?:04/03/30 09:20 ID:???
このまま綺麗に終わりを迎えられていたら、私の記憶ももう少しましなものになっていたかもしれない。奇妙とも言え
る連帯感はあくまでもグループ内だけに存在するものであって、決して店内にいた全員を完全に均等に覆っていた
わけではなかった。相槌を打つだけで済んでいたのが仇になったのだろう。

64 :名無しさん?:04/03/30 09:30 ID:???
つまり、私は話題を提供する役目を持たずに済んでいたから、会話が一つの終わりを迎えたときに新しい話題を探
そうとしなくてもよかった。本当はみんなに甘えてしまわずに自分からも何か出すべきだったんだろうけど、とにかく
暗黙の内に話題の提供者の中から私は除外されていた。期待されてなかっただけかもしれないけど。

65 :名無しさん?:04/03/31 09:01 ID:???
 

66 :名無しさん?:04/04/01 09:22 ID:???
私のように聞き手役にまわって相槌に徹する人もいれば、どんどん話題を提供してくれる人もいた。自由にグルー
プ間を飛びまわって、いろんなところで賑やかに楽しむ人もいた。まるで最初から与えられた自分の役割を、みん
な忠実に果たしているようでもあった。

67 :名無しさん?:04/04/01 09:35 ID:???
ふと思ったんだけど、案外その通りだったのかもしれない。一見みんな思うままに入り乱れて楽しんでいるようだっ
たけれど、ある種の法則性というか不文律みたいなものが、表立ってはいないけれどしっかりと根底にあって、私達
の全ての行動を司っていたような気がする。

68 :名無しさん?:04/04/02 09:14 ID:???


69 :名無しさん?:04/04/03 09:12 ID:???
例えばAとBという2つのグループがあって、AからBへ出掛けてくる人はいても、BからAに出向く人はいなかった。同
じようにBからCはあっても、CからBという人の流れは皆無だった。そういうのが全グループの間に暗黙の内に存在
していた。誰もが当たり前だと思っていたのか、それとも気付いていなかったのか、気付かない振りをしていたのか
は分からなかった。

70 :名無しさん?:04/04/03 09:23 ID:???
例外的にAのグループの人はBにもCにもそれ以下にも出掛けることが出来るようだったけれど、あまり積極的に下
のグループには行きたがってないみたいだった。B以降のグループの人達は、そうやって誰かがグループ内に降り
てきたときに話題を掻き回されても文句一つ言わなかった。

71 :名無しさん?:04/04/04 06:01 ID:???


72 :名無しさん?:04/04/05 09:15 ID:???
それは仕方ないことだったのかもしれない。どうしたって力の優劣というか、クラスの中心的というか、そういう人達
とそうでない人達というのは必然的に別けられて、似た者同士でグループを形成するのが普通というか当たり前か
もしれない。考えてみると小学校か、もしくはもっと早い時期からそうだったような気がする。

73 :名無しさん?:04/04/05 09:26 ID:???
各グループ内では比較的楽しげな雰囲気だったと思うけど、各グループ間の交友はあまり盛んではなかった。いっ
そのこと各グループだけで個別に会を設けた方がよかったんじゃないかな、と思った。一つの会場にクラス全員が
集まって、その状況を十分に楽しんでいるのは一部の人達だけかもしれなかった。

74 :名無しさん?:04/04/06 09:08 ID:???
 

75 :名無しさん?:04/04/06 09:30 ID:???
用意された料理もあらかたなくなり、飲み物を取りに立つ人もいなくなって、会のお開きが人づてに伝えられてきた。
グループの中も外も急に慌しくなった。別れの挨拶、ニ次会の相談、少し熱を上げた雑談、そんな間を縫うようにま
た何人かが騒々しく店内を渡り歩いた。会の開始よりももっと騒然とした雰囲気になった。

76 :名無しさん?:04/04/06 09:44 ID:???
私がいたグループでもこの後のいわゆる二次会の約束事が取り決められて、ある1人の家でお泊まり会を開くこと
になった。というよりあらかじめ数人で計画していたらしい。場の流れで私も誘われた。あまり乗り気がしなかったか
ら、急に1人増えたらまずいんじゃないの?とやんわり断る含みを持った発言をした。

77 :名無しさん?:04/04/07 09:17 ID:???


78 :名無しさん?:04/04/08 09:08 ID:???
大丈夫、広いから。お泊まり会の主催者のこの一言で私の懸念が払拭されたと思ったのか、回りの人達はしきりに
私をその気にさせようと躍起になって説得し始めた。でも私ははっきり言って、あらゆる意味で特別な今日という日を、
明日の朝を迎えるまで誰かと一緒に過ごしたくなんかなかった。

79 :名無しさん?:04/04/08 09:21 ID:???
それに加えて私には、一生懸命誘ってくれる皆の真意を掴めないでいた。本当に来て欲しいのだろうか?本当に私
に?単に人が多い方が楽しいとか、1人だけ誘わないのはあれだから、仕方なしに必死で来て欲しい演技をしてい
る?それともこの会場で冴えない顔をしていた私に同情しているだけ?

80 :名無しさん?:04/04/09 09:33 ID:???


81 :名無しさん?:04/04/09 12:17 ID:???
 

82 :名無しさん?:04/04/10 08:55 ID:???
根拠も何もないただの推論、というより邪推でしかなかったけど、私の気勢を削いでしまうのにそんなことは問題じゃ
なかった。私の見聞きするみんなの態度や言動が、私の妄想で汚く色付けされているだけなのかもしれなかったが、
はっきりとそうなんだという確証も、実は全然違うんだという根拠も見出せなかった。

83 :名無しさん?:04/04/10 09:10 ID:???
つまり私は混乱していた、のだと思う。自分で考えた計画があっさりと失敗に終わって、いつのまにかこんなところで
辺り障りのないような会話を交わして、そして行きたくもないお泊まり会なんかに誘われている。一連の煩わしいこと
がらの原因が私自身の不甲斐なさにあることは明白だったけれど、私はそのことすら拒絶しようとしていた。

84 :名無しさん?:04/04/11 09:37 ID:???
出来るだけ無難な断り方を模索しながらそのやり取りを続けていると、グループ内の会話にいきなり顔を突っ込んで
きた者があった。彼女はねぇねぇ、と大きな声で私達の会話を中断させて、全員の注意を自分に向けさせた。同じく
私の優柔不断さから家まで迎えに行くことになって玄関先で40分待たされた、あの彼女だった。

85 :名無しさん?:04/04/11 09:50 ID:???
これから2次会でカラオケに行くんだけど、みんなもどう?と彼女は言った。グループ内に小さな動揺が走って、み
んなはちらちらとお互いの顔を伺うようにした。せっかくだけど、とお泊まり会の主催者が言った。私達、もう予定決
めちゃったから。恐る恐るという感じで彼女はそう断った。

86 :名無しさん?:04/04/12 09:54 ID:???
 

87 :名無しさん?:04/04/13 09:23 ID:???
あ、そう?と特に残念そうな素振りもなく彼女が言った。みんなそっちに行くの?あなたも?と彼女は不意に私の方
を向いて言った。一瞬私は言葉に詰まった。そういうわけじゃないけど……。頭の中で「はい」と「いいえ」を天秤にか
けたけれど、私の口から出てきたのはまたもや曖昧な言葉だった。

88 :名無しさん?:04/04/13 09:36 ID:???
状況が状況だったからうまく頭が回転しなくて言葉を濁してばかりだったのか、ずっと前からこうやって曖昧にやっ
てきたのか、私にはよく分からなかった。とにかく私の生返事を聞いた彼女は、さっきまでのお泊まり会の参加者全
員分に匹敵する熱心さで、私を彼女達の2次会に誘い始めた。

89 :名無しさん?:04/04/14 09:15 ID:???


90 :名無しさん?:04/04/14 09:21 ID:???
迎えに行ったときと同じような感じで、いつのまにか私は彼女の持ちかけてきたカラオケの2次会に参加することにな
ってしまった。お泊まり会の参加者達は少し残念そうな目で私を見たけれど、特に何も言わなかった。私はお泊まり
会に参加できなくなってよかったのか、また強引に自分のことを決められて嫌だったのかはっきりできないでいた。

91 :名無しさん?:04/04/14 09:32 ID:???
あのままお泊まり会に参加していた場合と、こうやって2次会に半強制参加をさせられる場合と、どっちもメリットとデ
メリットが複雑に絡み合っていて、カラオケの2次会への参加が決定されたときも、私が本当に望む、というより私に
とってより負担が少なくて済む方がどちらだったのか、その時点では判断できなかった。もっとも、それは今でも分か
らないままなんだけど……。

92 :名無しさん?:04/04/15 09:38 ID:???
b

93 :名無しさん?:04/04/16 09:33 ID:???
はっきりとした閉会宣言もないまま、みんな自分の好きなタイミングで店から出始めた。お泊まり会のグループの人
達も、私と軽い別れの言葉を交わして別れた後に、いつのまにか外へ出てしまっていた。人の姿は確実に少なくな
っていったけれど、店内はより一層騒然とした雰囲気になりつつあった。

94 :名無しさん?:04/04/16 09:46 ID:???
私が新しく編入させられたグループはまだパーティーの余韻を楽しみたいのか、会場の入り口近くに陣取って通り
かかる人全員に大声で大袈裟な別れの言葉を投げ付けたり、半ば強引に握手を求めにいったりしていた。通りか
かる人はみんなそれらに同じように大袈裟に応えてから、それぞれ次の自分達の予定へと移行していった。

95 :名無しさん?:04/04/17 00:59 ID:???
 

96 :名無しさん?:04/04/17 04:50 ID:???
age

97 :名無しさん?:04/04/17 13:15 ID:???


98 :名無しさん?:04/04/18 08:02 ID:???
最終的に店内に残ったのは、私を含めて6人だけだった。私以外の人達は最初からそのグループに属していた。彼
らは店から他のみんなが出ていった後、20分近くも同じ場所でだらだらと時間を潰した。初めから決まっていた予定
内のことだとでもいうように、ただの1人もその無駄な時間に疑問を持つ者はいなかった。

99 :名無しさん?:04/04/18 08:15 ID:???
私はといえば、このグループに編入させられて他のみんながこぞって退場していき、だらだらとした無為な時間を浪
費するまでの間、ずっとグループの奥まったところに座って極力目立たないように努めていた。それでもある意味お
節介な人達から声をかけられて、その度に自分の選択についての後悔が大きくなっていくような気がした。

100 :こう:04/04/18 12:51 ID:/6bs+Flt
100とったら、公務員試験受かる。

101 :名無しさん?:04/04/19 09:24 ID:???
 

102 :名無しさん?:04/04/20 09:02 ID:???
その6人以外が全員退場した後も、彼らのテンションは依然として高いままだった。大声で話したり笑ったり、唐突に
叫び出したりする人もいた。こういった人達の中において、私は急に怒鳴り付けられるような話題の振り方をされたと
きだけ、ただ引きつったような笑い顔を浮かべるのが精一杯だった。

103 :名無しさん?:04/04/20 09:14 ID:???
単純にそういう騒ぎにも飽きたのか、ようやく私達は2次会の会場に向かうことになった。このときもまた誰かが明確
に「行こう」といったわけでなく、気が付いたらみんなそれが当たり前で自然なことだとでも言うかのように出口に向
かって動き始めていた。私はあわててみんなについて行った。

104 :名無しさん?:04/04/21 08:50 ID:???
相変わらず騒々しい声を辺りにばら撒きながら、私達はゆっくりとした速度で次の会場へと向かった。私はその歩く
速さと、集団から感じる疎外感のようなものに少しいらいらしていた。何でこんなところにいるんだろう、何で私をこの
集まりに加える必要があったんだろう、そんなことが頭の中でぐるぐると回っていた。

105 :名無しさん?:04/04/21 09:02 ID:???
嫌なら抜ければよかったけれど、私には浮ついた集団に水をかけるような真似をする度胸がなかったし、またそうす
るタイミングも掴み損なっていた。私が出来ることといえば、ひたすら本当の解散を待ち続けるか、もしくはこれまで
も何度かやってきたように、向こうからのアクションを待つことだけだった。

106 :名無しさん?:04/04/22 08:53 ID:???
けれど、じっと待っていれば誰かが何かを持ってきてくれる、ということがまず起こり得ないのは分かっているつもり
でいた。みんなは、みんなが共有していると思っている雰囲気みたいなものを一番大切に考えているようだったし、
私が待っていたことは、みんなのそれと大きく相反するものだったから。

107 :名無しさん?:04/04/22 09:05 ID:???
つまり、一向にみんなと同調しようとしない私に対して、場が白けるから帰ってくれ、と文句を言う人はいなかった。
言いたくてたまらなかったけど、雰囲気のことを考えてひたすら我慢していたのか、それとも私が考えていたよりも
私が取っていた行動は影響を与えなかっただけなのか、正確には分からない。

108 :名無しさん?:04/04/23 09:23 ID:???
 

109 :名無しさん?:04/04/24 09:28 ID:???
けれど、そんな私の思考とはまるで無関係にその2次会は進行していった。次の会場に着いてカウンターで一悶着
あった後、6人用にしては少し広い部屋をあてがわれて、ようやく少し暗いその部屋のソファに落ち付くことが出来た。
みんなは腰を下ろすなり自分の歌う歌を探し始めて、さっきと比べると気持ち悪いくらい静かになった。

110 :名無しさん?:04/04/24 09:40 ID:???
みるみるうちに予約リストが埋まっていき、それに比例してまただんだんと騒がしくなっていった。曲を選び終わって
手持ち無沙汰になった人達同士で話し始めたり、まだ曲目の載った分厚い本を睨んでいる人に勝手なリクエストを
してみたり、要するに部屋が静かだったのはほんの4、5秒くらいでしかなかった。

111 :シェリーマン☆らつ:04/04/24 13:54 ID:???
テステス!  テス

112 :名無しさん?:04/04/25 21:22 ID:???


113 :名無しさん?:04/04/26 08:49 ID:???
それからは、さっきの立食パーティーなど比較にならない程に騒々しくなった。カラオケの音量をギリギリまで大きく
してあったため、誰かが歌っているときに話そうとすれば必然的に怒鳴るような大声を出さなければならなかったし、
誰かが歌っている間にも遠慮なくそれらの大声が、2重3重にもなって飛び交っていた。


114 :名無しさん?:04/04/26 09:08 ID:???
曲の合間合間には気の抜ける、というより気恥ずかしくなるようなボリュームで無害なBGMが流れてきた。けれどみ
んなは気恥ずかしさを無理矢理振り切ろうとでもするかのように、始終大声を出し続けていた。おかげでひとときも私
達の部屋が静かになることはなかった。私は私に話題を振られないことを願っていた。

115 :名無しさん?:04/04/27 01:02 ID:???
 

116 :名無しさん?:04/04/27 09:28 ID:???
 

117 :名無しさん?:04/04/28 09:03 ID:???
けれどもちろん、1人だけ大人しくて非積極的な私をみんなが見逃してくれるはずもなかった。第一その場には6人し
かいなかったのだから、どうしたってテンションの高い誰かから大声で話し掛けられたり、次に何か歌ってくれと言わ
れたりした。その度に私は、顔だけは笑顔にしながら頷いたり、首を振ったりした。

118 :名無しさん?:04/04/28 09:17 ID:???
誰かに話し掛けられ、頷き、たまに歌ってと言われて遠慮して、そんなことが飽きることなく繰り返された。私がみん
なの期待や要求に応えられなくても、みんなは特に気にしている様子はなかった。私のせいで場が白けるというよう
なこともなかった。何で私を加えたんだろう、という疑問が徐々に大きくなっていくような気がした。

119 :名無しさん?:04/04/29 10:54 ID:???


120 :名無しさん?:04/04/30 09:18 ID:???
不意に部屋の扉が開いて、同じくらいに騒々しい集団がずかずかと入り込んで来た。私はちょっと驚き、部屋を間違
えでもした集団なのだろうかと思った。けれど彼らは一向に退散する様子はなくて、私達のグループの中の数人と親
しそうに言葉を交わしているようだった。もちろん私以外は誰も驚きなどしていなかった。

121 :名無しさん?:04/04/30 09:32 ID:???
私の近くまで回って来た乱入集団の1人の顔を見て、やっと彼らが違うクラスだった同級生の集団であることが分か
った。最初からこうやって合流するように、彼らと決めていたらしかった。6人では少し広過ぎるような部屋を取ったの
も、多分このためだったんだろうなと思った。そしてみんなはそのことを知っていたのだろう。

122 :名無しさん?:04/05/01 08:35 ID:???
集団の1人が、私達のグループの1人と何か話し合っていた。言っている言葉は私には聞こえるはずがなかったけ
ど、彼らは身振り手振りを使って会話していたので、大体の内容は想像がついた。1人が壁の向こうにある隣の部
屋を指差し、私達の部屋の入り口を指差した。

123 :名無しさん?:04/05/01 08:46 ID:???
何気なく入り口の方を見ると、部屋に入り切れていない人達が扉の所に固まっていた。4、5人は顔だけ部屋の中に
突っ込んで、自分達のリーダーの決定を待っているようだったけれど、その後ろに控えている大多数の人達はリー
ダーとは関係なく各自勝手に談笑を繰り広げていた。

124 :名無しさん?:04/05/02 14:04 ID:???


125 :名無しさん?:04/05/03 08:41 ID:???
入り口の所に固まっていた集団は、そのリーダーの指示に従ってぞろぞろと移動を始めた。私達の部屋の隣と、通
路を挟んだ迎い側の二つを取ったようだった。一部の人達は私達の部屋に居座り続けた。居心地がよかったのか、
単純に隣と向かい側に入り切れなかったのか、正確なところは分からなかった。

126 :名無しさん?:04/05/03 08:53 ID:???
部屋の中はますます騒然とした。人数が増えたこともあったし、しかも全員が負けないくらいによく喋るものだから、
私に話題を振られることも極端に少なくなった。それはそれで気が楽だったけど、同時に帰りたいという気持ちも強
くなっていった。帰るのが無理でも、少なくともこの部屋にはあまり居続けたくなかった。

127 :名無しさん?:04/05/04 08:40 ID:???
そうは思っても、3つの部屋を自由気ままに行き来する人が何人かいたとしても、ただ漠然とこの部屋にいたくない
というだけで、この部屋に代わる居場所もない私にとっては、そうやって部屋間を移動することすら難しそうだった。
移動した先が、この部屋よりももっと気詰まりに感じられるかもしれない。

128 :名無しさん?:04/05/04 08:56 ID:???
結局私は最初に座った場所から動かなかった。その私の横を通ってみんなこの部屋に入って来たり、隣か向かい
側かの部屋に出かけて行ったりしていた。どこかと少しづつ交代しているみたいに、徐々に最初の6人と後から来た
集団の人達とが入れ代わっているようだった。移動してもしなくても大差ないような気がしてきた。

129 :名無しさん?:04/05/05 09:33 ID:???
 

130 :名無しさん?:04/05/06 00:24 ID:7Zt+ZP4R
tesuto

131 :名無しさん?:04/05/06 08:51 ID:???
私はふと立ち上がった。そのままドアに向かって移動してみた。みんなそれぞれ自分達のことに夢中らしく、特に私
に気を留める人はいないようだった。もしかしたらそのまま部屋を出て、誰にも気付かれないまま家まで帰ることだ
って出来たかもしれない。多分誰かに見られても、まさか帰ろうとしているとは夢にも思わないだろう。

132 :名無しさん?:04/05/06 09:04 ID:???
ドアノブに触れようとしたとき、急に誰かが外からドアを開けた。そのまま勢いよく部屋に飛び込んで来ようとしたため、
私とぶつかりそうになった。あ、ごめーん、とその誰かが言った。ふいに私の鼻先をアルコールの匂いが掠めた。目
の前にいたのは、楽しくて仕方ないといった表情をした、私をこの騒ぎに連れて来た彼女だった。

133 :名無しさん?:04/05/07 11:56 ID:???


134 :名無しさん?:04/05/07 22:15 ID:???
 

135 :名無しさん?:04/05/08 11:05 ID:???


136 :名無しさん?:04/05/09 08:43 ID:???
あれ、どこ行くの?と彼女は幾分間延びした声で私に尋ねた。ちょっとトイレに、と私は答えた。本当はそんなところ
に行く必要もなかったけれど、口が勝手に動いていた。彼女は私の顔を間近で覗き込むように見詰めた。私は思惑
が見透かされているんじゃないかと思って、内心びくびくした。彼女の息が私の頬に当たるのが分かった。

137 :名無しさん?:04/05/09 08:55 ID:???
彼女は私を見据えたままニヤッと笑っただけで、そのまま何も言わずに部屋の奥に進んでいき、騒々しい集団の中
に混ざっていった。私は急いで部屋を出た。ドアを閉めた後でもまだ、部屋の中の嬌声が聞こえてくるような気がし
た。気持ちがかなり上ずっているのが自分でも分かった。

138 :名無しさん?:04/05/10 09:21 ID:???
トイレに入って鍵をかけ、壁にもたれかかって私は大きく息を吐いた。何やってるんだろう、と思った。急にやることな
すことが空回りをし始めているように思えた。以前の私ならもう少しは、いろんなことに上手くたちまわってこれたよう
な気がしたけれど、じゃあ以前の私が具体的にどうやっていたのか、と考えてみてもまるで思い出せなかった。

139 :名無しさん?:04/05/10 09:34 ID:???
どうやっていたのかは思い出せなかったけど、以前の私なら確かにあの騒ぎ立てる集団の1人として振る舞い、もう
少しましな思い出を作れたかもしれない。けれど私には、以前どうやっていたのかが分からないのと同じように、どう
してそうなったのか、ということもはっきりとは掴めなかった。

140 :名無しさん?:04/05/11 00:46 ID:???
 

141 :名無しさん?:04/05/11 19:35 ID:???


142 :名無しさん?:04/05/12 09:12 ID:???
どうしようか、と考えた。またあの騒ぎの中に戻れば、苦痛にはなるけれど危険ではなかった。帰ってしまえば楽に
はなれるだろうけれど、発覚したときのリスクが大きいような気がした。いつものことながら打算的な考え方だな、と
自分で思った。そして、今度もどうせ危険を回避する方向に落ち付くんだ、ということも分かっていた。

143 :名無しさん?:04/05/12 09:27 ID:???
あまり必要のない水洗のレバーを引いてトイレを出ようとした。ドアを少し開けると、洗面台の鏡に向かってSが立っ
ているのが見えた。私の体の中心から、じわりと熱が全身に広がっていくような感覚がした。それが頭の先まで達し
たとき、私は思わずドアを音がしないようにして閉めてしまった。

144 :名無しさん?:04/05/12 11:07 ID:s29AutBQ
age

145 :名無しさん?:04/05/13 10:07 ID:???


146 :名無しさん?:04/05/14 08:42 ID:???
頭の中での整理が追い着かないほどに、次々にいろんなことが噴き出してきた。何故こんなところにSがいるのか?
から始まって、この場を上手くやり過ごす方法や、どうやってSに話し掛けるのが一番自然か、というようなことまでが
私の頭の中でいっぺんに湧き返り、凄いスピードでぐるぐる回り始めた。

147 :名無しさん?:04/05/14 08:55 ID:???
私の体中に広がる熱はゆっくりとその度合いを増して、頬や耳たぶまでも赤く侵食してしまったようだった。頭の中の
渦が血管に圧迫されて流れを速めていくような気がした。私は私がこの後取るべき行動について必死で考えようと、
この次に来る次の状況に備えようと思っていたけど、その渦の中に巻き込まれてしまって何も出来なかった。

148 :名無しさん?:04/05/15 10:24 ID:???
 

149 :名無しさん?:04/05/16 08:31 ID:???
頭の中は混乱しながらも、聞き耳を立てて外の様子を伺うことは怠らなかった。しばらくしてSが出ていったのを音で
確認した後もそこから動けなかった。私の立てた計画の通りに私とSが二人きりになる機会が、まさかこういった形で
やって来るとは想像もしていなかった。

150 :名無しさん?:04/05/16 08:49 ID:???
Sの姿をちらりと見た瞬間、というより姿を確認してとっさにドアを閉めようとしたとき、もちろん私はその計画のことを
完全に忘れていたわけじゃなかった。どちらかと言うと一番初めに思い出したと思う。私の体の中のどこかが、計画
の遂行を必死で訴えかけてきたのも知っていた。

151 :名無しさん?:04/05/17 09:02 ID:???
ここまで来ての計画の実行はもう、Sのために、という偽善的な理由が通用しないのは分かっていた。ただ私は、実
行のきっかけすら外部の状況に任せたくせに、それが急に自分に突き付けられると、とたんにまた新しい言い訳を
考え始める自分にうんざりしていただけだった。

152 :名無しさん?:04/05/17 09:16 ID:???
もはや自分自身のためにSを使う、利用する、といった形になっていることは明確だったけれど、それでもまだ実行
を尻込みする理由がはっきりとしなかった。はっきりさせたくなかった、つまりは認めたくなかったというだけのことな
のかもしれない。自分のために、他人の古傷を掻きむしる行動を取ろうとしていることを。

153 :名無しさん?:04/05/18 09:23 ID:???


154 :名無しさん?:04/05/19 08:58 ID:???
本当にもう帰ろう、と思った。Sに伝えなければSは嫌な気分になることなく、私だけが後味の悪さを持ち続けるだけ
で済む。そもそも、私もSも嫌な思い出を残してまで言わなければいけないような重要な問題でもないんだ。今を継
続するだけで十分事足りるじゃないか。何を荒立てる必要があるんだろう。

155 :名無しさん?:04/05/19 09:11 ID:???
ネガティブな感情が私の頭の中いっぱいに広がってきた。私が多少我慢すれば、という条件付だったけれど、確か
にそれが一番穏便な結論のように思えた。状況が整ったとしても、私には行動することも出来なかった。Sの顔さえ
まともに見ていない。もうお終い、私は自分に向かってそう言った。

156 :名無しさん?:04/05/20 09:05 ID:???
Sはもう立ち去った、というのは完全に分かっていたけれど、私は必要以上に慎重に行動した。さっきまでSがいた鏡
の前を通り抜けて入り口のドアの陰に背中をつけ、用心深く廊下の様子をうかがった。集団が発する騒音が途切れ
途切れに私のところまで微かに届いていた。こそこそ動き回る自分が馬鹿みたいに思えた。

157 :名無しさん?:04/05/20 09:17 ID:???
例えSとばったり出くわしても、私が不自然な様子を見せなければ別にどうということはないんだけど、今はSの顔を
見たくなかった。自然に振舞える自信もなかった。もちろん計画を実行しようなんて思ってもなかった。だから尚更S
と対峙すれば私達の気まずさが増すような気がした。

158 :名無しさん?:04/05/21 10:11 ID:???


159 :名無しさん?:04/05/22 05:00 ID:???
          

160 :名無しさん?:04/05/22 09:16 ID:???
無事に廊下に出られた。低くくぐもった歌声が何処からともなく聞こえてくるだけで、廊下には誰の姿もなかった。一
瞬、誰に断りもなく帰ってしまうことに少し抵抗を感じた。あまりにも無礼過ぎるのでは?と思ったけれど、私はすぐ
に歩き出した。多分私1人いなくなったって、誰も気に留めないだろう。

161 :名無しさん?:04/05/22 09:28 ID:???
それにあの人数だ。大体正確に何人いるのかもはっきりしていないんだし。まあ私が人数を知らされていないだけ
で、主催者はちゃんと分かっているのかもしれないけど。どっちにしても、あの集団の中で私がやらなければいけな
いようなことはもうないはずだ。ぼんやりそんなことを考えながら歩いた。

162 :名無しさん?:04/05/22 15:16 ID:???
 

163 :名無しさん?:04/05/23 08:53 ID:???
出口に近付いて行くにつれて、ある種の感情が自分の中で高まっていくのが分かった。それに後押しされる形で、
断りもなく帰ろうとする無作法な私の行動が正当化されていくような気がした。とはいっても、罪悪感とまで大袈裟
なものじゃなかったけれど、後ろめたい気持ちが完全に消えてしまったわけではなかった。

164 :名無しさん?:04/05/23 09:04 ID:???
消えてしまったわけではなかったけれど、消えてしまうのは時間の問題だと思われた。頭を過ぎる今日1日分の記
憶がさらにその感情を煽り立てた。感情はますます私の正当性を揺るぎないものへと近付けていった。随分久し
振りに感じるようなその感情が、私にはむしろ心地良くさえあった。つまり私は怒っていたのだ。

165 :名無しさん?:04/05/24 04:23 ID:???
 

166 :名無しさん?:04/05/24 10:06 ID:???


167 :名無しさん?:04/05/25 08:51 ID:???
ただ、私は自分が何に対して腹を立てているのか分かっていなかった。少し自分勝手過ぎる参加者達に対して、の
ようでもあったけど、不甲斐ない自分自身に対して、でもあるような気がした。あまり関係のないSに対しても腹を立
てていたのかもしれない。

168 :名無しさん?:04/05/25 09:07 ID:???
でももう誰がどうしようとかまわない、私は無理矢理にでもそう思おうとした。彼女達が思うがままに騒ぎ続けるの
はもちろん、私がこっそり帰ろうとするのだってもういいだろう。店の出口に近付いていく。受付には誰もいなかっ
た。Sは……、と私はふいにSのことが気になった。

169 :名無しさん?:04/05/26 08:42 ID:???
何故ここにSがいたのだろう?私と同じように誰かに連れて来られたのか、もしくは自分で来ることを決めたのか。い
ろいろなことを考えようとしても、正しそうな答は何一つ見付けられなかった。この日の特別な事情による一時的な混
乱のせいなのか、生まれ付き安易に答を出せない性分のせいなのか、それすらも分からなかった。


170 :名無しさん?:04/05/26 08:54 ID:???
でも、と私は思う。もう考えなくてもいい。私はこの場からいなくなる。私は家に帰る、彼女達は気が済むまで騒ぐ。
私が彼女達の求めるものに協力できるとも思えなかったし、彼女達が私の期待に応えることもないのだから。
……いや、もうよそう。とにかく私は家に帰る。

171 :名無しさん?:04/05/26 14:03 ID:FF73fa0L
          ∧_∧
    ∧_∧  (´<_`  ) 兄者は十年後にはきっと、せめて十年でいいからもどってやり直したいと
  煤i;´_ゝ`) /   ⌒i  思っているのだろう。
   /   \     | |  今やり直せよ。未来を。
  /    / ̄ ̄ ̄ ̄/ |   十年後か、二十年後か、五十年後からもどってきたんだよ今。
__(__ニつ/  FMV  / .| .|____
    \/____/ (u ⊃

172 :名無しさん?:04/05/27 10:10 ID:???


173 :名無しさん?:04/05/28 04:48 ID:???


174 :名無しさん?:04/05/28 09:00 ID:???
背後から一際大きな嬌声が聞こえてきて、私は思わず振り返った。4、5人の男女が、ちょうど私のいた部屋から連
れ立って出てくるところだった。気付かなかった振りをして慌てて視線を出口の方に戻したけど、そんなことをしたっ
てすでに手遅れだった。案の定、私はその中の一人に目ざとく見付けられていた。

175 :名無しさん?:04/05/28 09:14 ID:???
私を呼ぶ大きな声が受付のフロア中に響いた。私は身を硬くしながら、ああやっぱり、と思った。何故彼女はことご
とく私を捕まえておこうとするのだろう?意図的なのか、偶然なのか分からなかったが、私はまた彼女によって囚わ
れの身になってしまうようだった。

176 :名無しさん?:04/05/29 03:41 ID:???
 

177 :名無しさん?:04/05/29 10:45 ID:???
 

178 :名無しさん?:04/05/30 01:40 ID:???
  

179 :名無しさん?:04/05/30 08:38 ID:???
一度少しだけ振り向いてしまったにもかかわらず、気付かなかった、聞こえなかった振りをしてそのまま立ち去る度
胸というか、あつかましさというか、とにかくそんなものが私にあるわけもなくて、かといってもう全部綺麗に諦めて、
笑顔で彼女達の元へ戻っていく潔さ、というものもなかった。私は立ち尽くしていた。

180 :名無しさん?:04/05/30 08:51 ID:???
もう一度私を呼ぶ声がした。何かに首を掴まれ、捻じ曲げられるようにして私は振り向いた。彼女を先頭にして残り
の人達も、ぞろぞろとこっちに近付いてきていた。何をするつもりなのだろうか、彼女達はただ楽しそうな表情を浮か
べているだけで、私にはその意図が見えなかった。

181 :名無しさん?:04/05/31 08:39 ID:???
これから私達だけで場所を変えようと思うんだけど、一緒に来る?と彼女は私の前まで来てから笑いながら言った。
私と彼女が対峙している横を、彼女の連れの4、5人が通り過ぎて出口に向かって行った。一番後ろの男子が振り向
き様に、先行ってるよ、と彼女に向かって言った。彼女の反応も確かめず、彼はそのまま歩き去った。

182 :名無しさん?:04/05/31 08:54 ID:???
短い間の後、どうする?来る?と彼女が言った。いや、もう少しここにいるから、と私は答えていた。彼女はそれ以
上私を口説き落とそうという気はなかったらしく、そう、じゃあ、と言い残して先に出て行った仲間を負い掛けていっ
た。残された私は、何がどうなったのかよく分からないまま、しばらくその場に留まっていた。

183 :名無しさん?:04/06/01 19:57 ID:???


184 :名無しさん?:04/06/02 08:44 ID:???
さっきまで帰ると意気込んでいたけど、不意のこのやりとりでその決意が急速に萎んでいくのが分かった。もう少し
ここにいる、と私は自分でそう言った。何だってもっとこう、とっさのこととは言えうまい具合に言えなかったんだろう。
言ってしまった以上、こっそり帰るのが難しくなってしまった。

185 :名無しさん?:04/06/02 09:06 ID:???
彼女にはああ言ったけど、そのまま帰ってしまうことだってやろうと思えば出来る。むしろそうした方がいいのかもし
れない。でも帰ってしまったら、後々すっきりしない結果になるだろう。そもそもそんなことが私に出来るのなら、最
初からこんな集まりに顔を出すこともなかったはずなのに。

186 :名無しさん?:04/06/03 09:13 ID:???
 

187 :名無しさん?:04/06/03 20:19 ID:???


188 :名無しさん?:04/06/04 08:36 ID:???
とにかくこの場から立ち去ってしまうことだ、と私は自分を奮い立たせるようにして頭の中で言った。考えるのは後か
らいくらでも出来るんだから。立ち去ってしまうことで起こるいろいろな問題は、起こった後日に改めて取り組めばい
い。私は正論を説いているつもりだったが、足が動かなかった。

189 :名無しさん?:04/06/04 08:47 ID:???
頭の中で飛び回っているいろいろなものを掴めないでいる感覚、というより私はもう自分から掴もうとはしていなか
った。自分の中で起こっていることを他人の目で見ているような気がした。頭の中で自分に向かって言った言葉さ
え、私自身どのくらい本気でそう思ったのか分からない。

190 :名無しさん?:04/06/05 08:27 ID:???
私は入口に背を向け、店の奥に向かって歩き出した。いろいろ考えるよりも、ここでこの場をやり過ごす方が多分楽
だと思った。そうだ、最初から私がでしゃばりさえしなければ、こんなに複雑になることもなかったのだ。しばらく大人
しくしていれば、じきにこの集まりも解散するのだから。

191 :名無しさん?:04/06/05 08:41 ID:???
特に迷うこともなく、一番最初に入った部屋に戻った。中はさっきよりも度を増して騒々しいようだった。誰の顔も見
ないようにして空席を見付け、その中でも一番騒々しい場所を避けたところに腰を下ろした。騒音を無視して部屋の
壁を見回し時計を探したが、どこにも時計なんか掛かっていなかった。

192 :名無しさん?:04/06/06 10:30 ID:???


193 :名無しさん?:04/06/07 08:56 ID:???
とにかく、と私は思った。終わるのを待っているだけでいいんだ。考える必要はないから。黙って俯いているのが辛
いならば、その辺の誰かとお喋りしてもいい。話題は出来るだけ下らないものが望ましい。何ならマイクを持たせて
もらっても構わない。まぁそんなことが出来れば、の話だけど。

194 :名無しさん?:04/06/07 09:08 ID:???
少し皮肉めいたことを思い浮かべたりもしたけど、私はそれでも全体の流れに気を配り、必要なときは笑顔を浮かべ
たり手を叩いたりした。私が帰りたがっていることを、誰にも悟られないようにするのに必死だった。居心地は悪かっ
たが、私の勝手な都合でみんなの気分を台無しにしてはいけない、とその場の空気を乱さないように必死だった。

195 :名無しさん?:04/06/08 09:29 ID:???
 

196 :名無しさん?:04/06/09 08:39 ID:???
しかしそうはいっても、私の意図が彼らに対して何らかの影響を与えているとは思えなかった。彼らは彼らで忙しそ
うだったし、それに私の意図は私自身の存在と同じくとても目立つようなものじゃなかったから。けれど私はそうせざ
るを得なかった。もっと面倒臭い状況に巻きこまれたくなかったからだ。

197 :名無しさん?:04/06/09 08:52 ID:???
露骨につまらなそうな顔をして振舞えば、彼らの方から私を排除しようとする動きが起こっていたかもしれない。お
前もう帰れよ、もしくはもう少し柔らかい言葉で退席を要求されたかもしれない。その場はそれでいいかもしれない
が、後々不利益で下らないしこりを残すことだけは避けたかった。だから私は無理矢理にでも笑った。

198 :名無しさん?:04/06/10 08:29 ID:???
笑いながら、何かの弾みでSと視線が合った。その瞬間またいろいろなことが頭に浮かんだ。とにかく、と何気なく私
が視線を逸らそうとする前に、Sが立ち上がって私の方に近付いてきた。私はSを見つめたまま動けなかった。Sは
私の目の前に顔を突き出し、来てたの?と大声で言った。騒音の中で、Sの顔は自然に微笑んでいるように見えた。

199 :名無しさん?:04/06/10 08:42 ID:???
あ、Sも来てたんだ?と私も大きな声で聞き返した。我ながら白々しい台詞だな、と思った。Sは私の言葉を聞くと嬉
しそうににっこり笑った。一瞬私はドキッとした。言い知れぬ不安が心の片隅に生まれ出たような気がした。私は動
揺しながらも、Sと合わせた顔に笑みが絶えないように尽くした。Sは私の隣に座った。

200 :名無しさん?:04/06/11 09:15 ID:???


201 :名無しさん?:04/06/12 08:20 ID:???
さっきトイレで見かけたとき程強く動揺したわけじゃなかったけれど、それでも私の体温が上昇していくのが分かっ
た。さあ、と私は思う。無垢にもこの騒ぎを楽しんでいるようなSが、一体私に対して何を言ってくるのか。Sの発言
に対して私は何と答えればいいのか。表情を笑顔に保ったまま、私はSの出方を待っていた。

202 :名無しさん?:04/06/12 08:35 ID:???
Sはいかにも楽しそうな顔をして、しばらく何も言わずに嬌声の中心を眺めていた。そこには相変わらず、というか
前にも増してテンションを高めた集団が騒ぎ狂っていた。何故こんなところで私とSが対峙しなければいけないの
だろう?私の計画が打ち砕かれた今になって、Sが自分から近寄ってくる意味って何なんだろう?

203 :名無しさん?:04/06/13 04:05 ID:???


204 :名無しさん?:04/06/13 08:46 ID:???
もちろん現実的に考えれば、Sは特に何か言うべきことを私に言いに来たのではなくて、ただ単純に私の顔を見て
近寄ってきただけであって、私が過敏になり過ぎていただけかもしれない。偶然が重なってこの場に私がいること
や、私自身が計画と抱えていたことなんかが作用して、私を猜疑的にしていたのだろうか。

205 :名無しさん?:04/06/13 08:57 ID:???
Sはしばらくの間黙って眺めているだけだった。私もSの視線が注がれている辺りに漠然と目をやって黙っていた。
まるで私とSだけ全然別の場所に2人きりにされたようで、周りの嬌声が遠ざかっていくような気になった。何か話し
かけたりしてその奇妙な雰囲気を正さなければ、と思ったけど、適当な言葉が見付からなかった。

206 :名無しさん?:04/06/14 08:21 ID:???
Sの出方を、Sが私に何かを言ってくるの待っていたけれど、一向にその兆しが見えなかった。初めの挨拶だけ交わ
してそれっきりだった。何なんだ?と思う。不確定な要素に囲まれてすっきりしない。私に理解できない理由でみん
なに行動されっぱなしで、私は随分気疲れしていたのか。

207 :名無しさん?:04/06/14 08:34 ID:???
本当はみんな、特に確固たる信念があってそうしている、というわけでもないのかもしれない。私が1人で気負って
いたから、偶然が重なってここまで来て隣にSがいる、ということにまで誰かの深い意図が働いているのかもしれな
い、と考えてしまっていただけなのかも。

208 :名無しさん?:04/06/15 09:31 ID:???


209 :名無しさん?:04/06/16 09:04 ID:???
私がどんなに大それた想像を働かせても、多分みんなそれとは無関係に動いているわけで、つまり私があれこれ
考えていろいろと対策を講じようとしても、結局私だけ何故かとんでもなく勘違いした遠い所に立って、そこから1人
でみんなを眺めているようなものだったのだ。

210 :名無しさん?:04/06/16 09:21 ID:???
Sはまだ器用だったのかもしれない。騒ぎの中心にも、遠い私のところにも行くことが出来る。私にああいったことを
されながらも、まるで何もなかったような態度で私との関わりを造り直した、そんな柔軟性を持っていてなおかつ状
況に応じて使い分けられる。純粋に凄いと思った。例え私とのそれが表面上のことであったとしても。

211 :名無しさん?:04/06/17 08:45 ID:???
誰がどう見ても、この状況に上手く溶け込んでいるのは私ではなくSだった。私自身、客観的に見て楽しそうな顔を
していたかどうか、わざわざ思い返す必要もない。他の人に話し掛けられる度合や、自分から集団に参加していこ
うという気持ちとその行動。そんなものをわざわざ観察する人がいるかというと、それも疑問だったけど。

212 :名無しさん?:04/06/17 09:04 ID:???
私は何とか周りに取り残されない程度に取り繕っていたつもりだけど、Sははるかに私よりもスムーズにそれを執り
行っていたようだった。Sは比較的誰とも親しげにやり取りしていたが、私はこの集まりのきっかけを作った彼女とS
以外でやり取りをした記憶がない。そしてSと私は、Sの考える最初の簡単な挨拶を交わした後、一言も口を聞かな
かった。

213 :名無しさん?:04/06/18 09:54 ID:???


214 :名無しさん?:04/06/19 08:16 ID:???
伝言ゲームみたいに会のお開きが私達にも伝わってきた。騒音がぴたりとやんで、みんな申し合わせたように言
葉少なになっていた。必要に駆られて交わされるぼそぼそとした会話がやたらに耳についた。それぞれもそもそと
席を立ち、背伸びをしたりして部屋を出る順番を待った。傍目から見れば滑稽な状況だったかもしれない。

215 :名無しさん?:04/06/19 08:28 ID:???
廊下に出るとまた少しずつ賑やかさが戻ってきた。私とSは自然と並んで歩いていた。私は俯き加減でいたため、S
がどんな顔をして何を見ていたのかは分からなかった。ただ2人とも黙って歩いていたところだけ同じだった。出口
に辿りつくまでに、私は自然にSから遠ざかりたかった。

216 :名無しさん?:04/06/20 09:10 ID:???
歩く速度を意図的に、極力不自然さを見せないように緩めた。そのまま後続のグループに吸収されようとした。そう
してどさくさに紛れて私とSとが離れれば、あとは忘れるだけでいい。何もなかったことにして、少し刺は残るだろうけ
ど、傷口は広げなくて済むかもしれない。

217 :名無しさん?:04/06/20 09:25 ID:???
私が半歩ほどSから遅れたとき、Sが急に振り返った。Sを盗み見ながら足を遅らせていた私に狙いを付けたかのよ
うに、Sの目は私の目を真っ直ぐ捕らえた。トイレでSの後姿を見たときよりも、いや比較にもならないような衝撃が
体の奥から飛び出してきた。私は直感した。Sは私が隠れたことを知っている、と。

218 :名無しさん?:04/06/21 10:29 ID:???


219 :名無しさん?:04/06/22 08:43 ID:???
Sの目は真正面から私の視線とぶつかり、一瞬お互いに逸らせなかった。私の体を熱が駆け巡って全身を侵食して
いくのと反比例に、Sの目から何かしらの力が抜けていくようだった。私に何かを言おうとせっかく開きかけた口元も、
その役目を不意に奪われてしまって戸惑っているようだった。SはSなりに自然さを装って視線をさらに後ろへと移動
させ、私は私なりに目線を前方へと逸らした。Sの口が完全に閉じられたのが視界の端に映ったような気がした。

220 :名無しさん?:04/06/22 08:59 ID:???
それがどういう意味を持っているのか、わざわざ論理的に推測する必要もなかった。いや、推測とか推論という回り
くどいものではなかった。増して直感とか確信とか主導的なものでもなかった。ただSもまた、私に何かを言うつもり
だった、という事実が突き付けられただけだ。

221 :名無しさん?:04/06/23 08:51 ID:???
もちろんSが私に言おうとしていたことなど、私に分かるはずがなかった。私の計画がSに知れることのなかったよう
に。お互い淡々とチャンスを待っていただけだったのかもしれない。相手も同じことを考えている、なんてこと思いも
せずに。だから私とSが向かい合った瞬間双方とも寸前でそのことに気付いて、慌てて視線を逸らしたのだ。

222 :名無しさん?:04/06/23 09:13 ID:???
だけどもう、決定的に遅かった。私達の目は一瞬とはいえ、しっかり相手の視線を捕らえてしまった、捕まってしま
ったわけだし、私はトイレで隠れたのをSに見付かっていた。Sは私を振り返って何か言おうと口を開いたのを私に
見られていた。そして、私達は視線を逸らした。私もSも立ち止まらなかった。

223 :名無しさん?:04/06/24 08:56 ID:???
私はうまく後続のグループに紛れ込んで、Sと離れる形になった。ちらちらとSの様子を伺っていたけれど、Sが私の
方を振り返ることは2度となかった。それはそのときの私にとっては有難いことだったが、私がSの立場でも振り返り
はしなかっただろうと思う。でもそれがまた私達の間柄を別つ原因になってしまった。今回のはどうしようもないほど
壊滅的だった。

224 :名無しさん?:04/06/24 09:10 ID:???
後から考えれば上手なやり方とか、最低限でも幾分ましな方法とか思い付くものだけど、そんなものは余計に後悔
を助長するだけで、当のそのときに思い付かない限り役になど立ちはしない。単純に出来事自体を忘れてしまえれ
ばいいんだろうけど、そんな器用なことも私には出来なかった。つまり、機会は永久に失われた。

225 :名無しさん?:04/06/25 10:08 ID:???


226 :名無しさん?:04/06/26 08:59 ID:???
2次会はみんなが勝手に散らばっていく、というような方法で自然に解散した。多分リーダーというか主催者みたい
なタイプの人が、早々に引き上げてしまったのだろう。いろんなことを考えているうちに、私の回りからも人垣が消え
て、いつのまにか独りになっていた。

227 :名無しさん?:04/06/26 09:14 ID:???
当初恐れていたSの追跡もなかった。私と同じでそれどころではなかったのだろう。だから、誰にも気にかけられず
独りになれたことは、むしろ私にとってはありがたいことだった。私を取り巻く周辺は静かになったけれど、未だに頭
は上手く機能せず、体には出所の分からない熱が充満していた。

228 :名無しさん?:04/06/27 11:02 ID:???
 

229 :名無しさん?:04/06/28 08:55 ID:???
独りになった後、どんな道を歩いてその間何を考えていたのか、もう思い出せもしない。どちらにしてもそのときに
いろんなことを考えてみても、とっくに終わってしまっていたことなんだから、どうなるものでもなかったのだ。ただと
てもとても不快だった。……不快? 少しニュアンスが違うかもしれない。でも、これより近い言葉が見付からない。

230 :名無しさん?:04/06/28 09:09 ID:???
日が経つに連れて、さすがに私の不快感も薄れていきはしたけど、同時にSとその諸問題に関する気負いも弱くな
っていった。気勢が失われていくごとに、Sと私の目が合ったことが単なる私の妄想というか、憶測に過ぎなかった
んじゃないか、と思うこともあった。現実味までもが薄れていくようだった。

231 :名無しさん?:04/06/29 14:34 ID:???


232 :名無しさん?:04/06/30 08:42 ID:???
本当に私は、Sと数秒間見詰め合ったのか、本当にSは、私に何かを言おうとしたのか、私が一方的に感じた敗北感
は日に日にその存在の根底から揺らいでいくようだった。Sと会わなくなって一層、私はその馬鹿げた疑念に囚われ
ていくことになった。Sと直接会って確かめる、という勇気さえなかった。

233 :名無しさん?:04/06/30 08:55 ID:???
もともと最初にあった問題を明確にしようと、私はあの日Sを捕まえようとしていたのに、散々迷った末にまた新しく
問題を作ってしまったわけで、今更Sが言い掛けたことを直接本人から聞き出そうとするなんて出来るはずがなか
った。そんなこと実際にやろうとも思えなかったし、する気力もなかった。

234 :名無しさん?:04/07/01 07:45 ID:???
けれど、心の奥底には問題そのものが大きく横たわっているのを自覚していた。ただ外的な原因、イレギュラーな
出来事を隠れ蓑にして、それに目が行かないよう意識的に操作していた、というのは今ならよく分かる。早い話、本
当に私にSとの問題を解決しようという意思があったなら、こんな無様な結果にはならなかったはずだった。

235 :名無しさん?:04/07/01 08:01 ID:???
全部無駄だった。いや、無駄どころか害悪ですらあった。中途半端に引っかき回して問題をこじらせただけだった。
散々Sを振り回して嫌な思い出を作らせたかもしれないし、私自身にも忘れ難いような記憶を残した。そしてその出
来事を私にはっきり焼き付けるかのように、Sが唐突にいなくなった。

236 :名無しさん?:04/07/02 10:13 ID:???


237 :名無しさん?:04/07/03 08:50 ID:???
この前、中学卒業以来でみんなが集まる機会があったけれど、そのときも何かを期待していたところがあったと思
う。結果的に、そのときも何がどうなった訳じゃなかった。私は自分から動くことが億劫になっていた。集まりの話を
聞いたとき、Sに来てもらって向こうから何かしてくれるのを待とう、と思った。

238 :名無しさん?:04/07/03 09:03 ID:???
Sが私に言い掛けたこと、本当に言い掛けていてその内容が重要なものであるんなら、Sの方から私に向かって来
ることもあり得るかもしれない。そして実際にそうなったら、状況を見ながら私の行動を検討すればいいだろう。何も
なかったら、これから一連の出来事を忘れることだけに集中すればいい。

239 :名無しさん?:04/07/04 08:58 ID:???
そんなつもりだった。前回あれだけ嫌な思い出が出来たのに、参加しないという選択肢はなかった。まだ何とかなる、
と漠然と考えていたのかもしれない。しかも私から何とかする、じゃなくて、向こうから何とかしてくる、と。それでだ
めなら、なかったことにしてしまえ、と。

240 :名無しさん?:04/07/04 09:12 ID:???
度重なる失敗に疲れてはいたけれど、私は私が精一杯解決に向けて努力した、という実感を得た覚えもなかった。
ここぞというときに逃げたり、手を抜いたり、他人のせいにしたり、自分に嘘をついたりしながら、最終的に私の中に
残ったのは、一生消えないかもしれない苦い思い出だけだった。

241 :名無しさん?:04/07/05 11:12 ID:???


242 :名無しさん?:04/07/06 06:31 ID:???
彼女はそこで少し黙り込んだ。暗くて静かで、寒いくらいの沈黙だった。少し間を置いた後、彼女はまた話し出した。

243 :名無しさん?:04/07/06 06:34 ID:???
本当はこんなにだらだらと長話を続けるつもりはなかった。ただ私が遭遇した出来事を客観的に並べるだけで十分
だったはずなのに、どうしてか伝える必要のないことまで喋ってしまったみたい。余計なものの中には、そのときそ
の時点でそう思ったこともあるし、今になって考えるようになったことだってある。

244 :名無しさん?:04/07/06 06:45 ID:???
当時を思い返したり、今の思考を補足したりすることが、ただの言い訳にしかなっていないんじゃないか、って思うこ
ともある。私はもっと正確に自分の感情を伝えたいだけなのに、一層詳しく話そうとすればするほど、私の口から出
てくる言葉は何だか真実味を欠いていくような気がする。

245 :名無しさん?:04/07/07 07:53 ID:???
あなたはこんな話聞きたくなかったかもしれない。増してやどうしても、あなたに聞かせなければならなかった理由
があるわけじゃない。ただ私は、誰かに聞いて欲しかっただけだった。あなたじゃなくてもよかった。よかったはずだ
と思う。祭壇の遺影、中学の卒業パーティーのときの写真だった。それを見てたらあなたの顔が浮かんできた。

246 :名無しさん?:04/07/07 08:08 ID:???
本当にどうしてだろう、と思う。きっかけがあなたとSの問題だったのは確かだけど、途中から純粋に私とSの問題に
切り替わっていたはずだった。はっきり言って、切り替わった以降はあなたにはまるっきり関係のないことだった、と
私は思う。それなのに……。

247 :名無しさん?:04/07/07 08:09 ID:???
再びの沈黙。今回のはさっきよりも数段長かった。

248 :名無しさん?:04/07/08 08:40 ID:???
彼女の恐ろしく長い独白の合間に、私は彼女の向こうの部屋の壁を見詰めながら、さあどうしたものか、と逡巡して
いた。そもそも、と私は考える。彼女は何の意図でこんな話を続けてきたのか?こんなに長く話すつもりじゃなかっ
た、あなたに話さなければならなかった訳でもなかった、と彼女は言った。

249 :名無しさん?:04/07/08 08:53 ID:???
では一体何なのだ?私は彼女を見ないまま、あれこれと可能性を浮かべてみる。現実味のない選択肢を切り捨て
ていく。残った可能性について、説得力のある根拠を拾い集めて補強する。たぶん、おそらく、もしかすると……。
いびつな形をしたそれには、推測というよりもむしろ、妄想と名付けたほうがよさそうだった。

250 :名無しさん?:04/07/09 11:44 ID:???


251 :名無しさん?:04/07/10 08:40 ID:???
私は、とか、とにかく、とか、彼女はいろいろな言い出し方でその後も彼女の言いたいこと、言うべきことを口に出そ
うと奮闘した。しかしどう頑張ってみても、彼女は彼女の言いたいことを正確な言葉として口に出すことが出来なか
った。数回試みを繰り返した後、もう諦めてしまったのか彼女はすっかり口を閉ざしてしまった。

252 :名無しさん?:04/07/10 08:50 ID:???
無意味な時間が流れていた。私は壁を見詰めたままじりじりと苛立ちを募らせていた。自分では無理だと、そう判断
した彼女は、私が想像した通りのものならば恐らく、私が彼女に何か言葉をかけるのを待っているに違いなかった。
むしろこの沈黙を利用して、私にそれを言わせようと強要しているとも取れた。

253 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:04/07/11 10:49 ID:???


254 :名無しさん?:04/07/12 08:20 ID:???
結局彼女は、問題に直面したときに真面目に考えている振りをしながら、何かの理由を見付けてはそれを自分の外
側のもののせいにして自分の主張を簡単に引っ込め、しかも本気でそうすることが一番の得策だと思っているのだ。
思い込もうとさえしようとしているかもしれない。

255 :名無しさん?:04/07/12 08:33 ID:???
しかし、と私は思い直す。私も彼女と同じようなものだった。……だった?同じようなものである。ふん、と頭の中で
嘲笑する。どちらにしてもあまり大した違いはない。彼女はもう発言を諦めてしまって押し黙り、私は最初から言葉
を発するつもりもなかった。両者ともこの事態を収拾しようとさえしない。

256 :名無しさん?:04/07/13 11:42 ID:???
 

257 :名無しさん?:04/07/13 23:46 ID:???
無音。多分私と彼女とはとてもよく似ている。考え方や行動理由など細かいところはそれぞれだが、その根底に横
たわるもの、ときどき表に現れては私達の言動に強く影響を及ぼすもの、ときに私が持て余す自分のそれと、彼女
が語ったことから感じ取れる彼女のそれは、とてもよく似ている、と思った。

258 :名無しさん?:04/07/14 00:00 ID:???
もしかしたら、やはり彼女は話す相手を選んでいたのかもしれない。私が今気付いたことを、彼女はずっと前から知
っていたのかもしれない。じゃあ何故、誰でもよかった、などと嘘を吐いたのか。悟られたくなかった?無意識だった?
何か深い意図があって?……まあそんなことはどうでもいい。

259 :名無しさん?:04/07/15 15:21 ID:???


260 :名無しさん?:04/07/16 08:41 ID:???
彼女がどんなつもりなのかは分からなかったが、話し相手に私を選んだ、というのは彼女の最大の失敗だと思う。
何故なら私は、彼女の期待や思惑には応えられなかったし、また応えるつもりもなかったからだ。最初から最後ま
で無言を貫くつもりだったし、実際にそうした。その夜、喋ったのは彼女だけだった。

261 :名無しさん?:04/07/16 08:54 ID:???
しかし、彼女の話をまるで聞くつもりがなかったわけではなく、むしろ彼女の言いたいことなら何でも受ける覚悟すら
あった、と自負できる。長い話の後黙りこくった彼女を見て、私は妙に自分の推論が正しいような錯覚を覚え、彼女
の口からその言葉が吐き出されて、私にぶつけられるのを待っていたのだ。

262 :名無しさん?:04/07/20 20:25 ID:???
 

263 :名無しさん?:04/07/23 18:33 ID:???
 

264 :名無しさん?:04/07/24 01:01 ID:???
はやくぅ

265 :名無しさん?:04/07/25 00:36 ID:???
この場においても彼女は、自分自身の意思でここまで漕ぎ着けておきながら、これまでしてきたように、あと一歩
踏み出すことを自分から放棄しようとしているのだ。散々もったいぶった言い回しでだらだらと語り続けた挙句に、
最大の用件を伝えようとしない。自らの決定を果たそうとしない。

266 :名無しさん?:04/07/25 00:50 ID:???
彼女がそれを伝えて後悔するのも、伝えずに終わって後悔するのも、はっきり言ってどちらでも私には関係がなか
った。私は彼女の通達なり宣告なりを受け取るだけで十分に役目は果たせるはずだったのだから。彼女から私へ、
それが伝えられたなら、彼女は彼女で勝手に満足でも後悔でもすればいいのだ。

267 :名無しさん?:04/07/25 23:49 ID:???
ちらりと彼女を見る。変わらぬ姿勢のまま微動だにしていない。もうこれ以上、何も話す気がないのだろうか?私は
一向に構わない。それで彼女が気の済むのなら。催促も追求もしない。彼女が再び口を開くか、あるいは立ち上が
って出て行くか。決めるのは彼女の役目で、受けるのは私の仕事だった。

268 :名無しさん?:04/07/26 00:03 ID:???
じっと動くのを待つ。もしかしたら、と思う。私がずっと黙っているのは、彼女へのプレッシャーになっていはしまい
か?いやしかし、彼女は誰でもよかった、と言った。誰がどんな言葉を返そうとも、彼女の本題には影響しないは
ずだ。本当に誰でもよかったのならば。第一、この状況の8割方は彼女のせいなのだ。

269 :名無しさん?:04/07/27 00:57 ID:???
焦れる。いらいらしてくる。早く決着をつけてしまえばいいのに。私は彼女の沈黙に辟易しながら、ただただ黙って
いた。何かを言おうとしながら、言えずにうなだれている彼女の姿、彼女自身の話に依れば、Sに対してもこんな風
に躊躇って、結局言えず仕舞いで苦汁を味わったのではなかったのか?

270 :名無しさん?:04/07/27 01:08 ID:???
でも、彼女は話さなかった。長い長い沈黙の後に、ぽつりと、帰るね、と言って立ち上がった。私は何も言葉をかけ
なかった。視線すら注がなかった。視界の隅で彼女が動き、ドアを開ける音、それからドアが閉じる音が聞こえた。
彼女は結局、何も伝えなかった。自分で語った、Sとの対峙のときと同じように。

271 :名無しさん?:04/07/28 00:21 ID:???
独りになった自分の部屋で、私は彼女との長いやり取りを思い返していた。何だったんだろう、よく分からなかった。
私が暗に求めていた言葉、そんなもの始めから彼女の中にはなかったのか?ただ私が妄想していただけのこと
だったのだろうか?では、あの意味深長な長い間は何だ?話し終わって帰るタイミングを掴み損なっていただけな
のか?

272 :名無しさん?:04/07/28 00:36 ID:???
時折、自分にとって都合のいい推測をする癖があるのは私も認める。だが、それにしても何というか、この喉に刺
でも刺さったような後味の悪さは、私の理屈でも説明するのが難しかった。彼女は私を弾劾するために、あの長い
話をしたのではなかったのか?

273 :名無しさん?:04/07/29 01:05 ID:???
卒業式の日、彼女を迎えに来させたのは私だ。彼女を強引に二次会へ参加させたのも私だ。散々邪魔されて気勢
を削がれ、帰ろうとしていた彼女を目ざとく見付け、再び彼女の行動を阻むようなことをしてしまったのも、他ならぬ
私だった。いや、まだある。自分の都合を優先して、そもそも全ての発端を作ってしまった。

274 :名無しさん?:04/07/29 01:15 ID:???
長い話の途中、彼女はわざと名前を言わなかったのだ。今更指摘しても仕方ない、と彼女が考えたからだと思って
いた。本当は違う。その時点からすでに、彼女は自分の言いたいことを伝え始めていたのだ。それからあの長い沈
黙。今更分かり易い言葉で私を突き刺す必要もない、と判断したのだろうか。

275 :名無しさん?:04/07/30 01:42 ID:???
私は突き刺される方がましだった。面と向かって言ってもらいたかった。お前のせいだ、と。Sと彼女の問題はおろ
か、Sの死の原因まで私のせいにされても、何も言われないことより遥かにましだった。だが、彼女はそうしなかっ
た。それすらもしてくれなかった。つまり、相当深い、のだ。

276 :名無しさん?:04/07/30 01:53 ID:???
私は過去の自分の失態を整合するために、無邪気という言葉を使ってきた。他人の気持ちや立場など、考慮でき
なかった代わりに私も悪意を持たなかった。そう思ってきた。しかし実際には、そう思っていたのは私一人だけだっ
たらしい。彼女にもまた、過去の私の行いはそう映っていたようだった。

277 :名無しさん?:04/07/31 00:34 ID:???
本当に言ってくれればよかったのに、と強く思った。全部お前のせいだ、と。そうすれば私にもまだやり方が残され
ているというものだ。次に彼女と顔を合わせることになったとき、多分彼女は今夜の出来事などおくびにも出さずに
私に接してくるだろう。彼女はそれでもいいかもしれない。だが、私は一体どうしたらいいのだ?

278 :名無しさん?:04/07/31 00:51 ID:???
思い掛けないところからの断罪を抱えたまま、私にはその出所である彼女と普通に接することなど出来るはずが
なかった。ああそうか、と思った。これが彼女の決定なのだ。Sが私のことを理解できなかったように、彼女がSと
最後まで分かり合えなかったように、私と彼女もまた強靭で不条理な力によって別たれたのだ。

279 :名無しさん?:04/08/01 23:11 ID:???
 

280 :名無しさん?:04/08/02 00:40 ID:???
もう彼女の真意を確かめることも出来ない。計算通りのことなのか、彼女の性格が作り出した偶然なのか、知る術
も残されていない。ただ彼女の課した罰だけが、私に刻まれただけだった。……彼女の?いや、多分Sも彼女に同
意するだろう。彼女の横にSもまた、名を連ねたに違いない。

281 :名無しさん?:04/08/02 00:52 ID:???
ああ、と思わず声を洩らした。彼女と、それからSの考えていたことがよく分かるような気がした。いくら自分から問題
を解決しようと躍起になってみても、相手にその意思がないのならば話し合いのテーブルに付かせることすら叶わ
ないのだ。彼女にはもう、その気がない。恐らく二度と、この問題がだれかの口から語られることはないだろう。

282 :名無しさん?:04/08/04 00:29 ID:???
仕方がないのだ、と私は自分に言い聞かせる。私は知らなかった。平凡だったと思っていた過去の自分が、潜在的
で多様なことがらに囲まれていた、などとは考えてみたこともなかった。自覚していた狡猾さで、いろんなことをうま
くやり抜けて来れた、と思っていたのに。

283 :名無しさん?:04/08/04 00:47 ID:???
しかし、当時の私に選択してきた道の危険性を教えることが出来たとしても、多分細かい状況がほんの少し変わる
だけで、きっと同じような結果を迎えることになっただろう、と思う。私は狡猾だったが、それ以上に不器用だった。
有用な情報を与えられたとしても、それを有効に使えたとは到底思えなかった。

284 :名無しさん?:04/08/05 02:06 ID:???


285 :名無しさん?:04/08/06 00:48 ID:???
不器用さについて考える。私に人並みの器量があったならば、事態は避けられただろうか?……分からない。そも
そもみんな、世間一般の人達というのは、私が自覚している私以上に器用なのだろうか?確かに今まで見てきたも
のから考えると、私のそれは他人よりも劣っているように思われる。

286 :名無しさん?:04/08/06 01:00 ID:???
私だけがこういった事柄に遭遇する確率が高い、というわけではなく、多かれ少なかれみんなにも同じようなことか、
それ以上に厳しいことが降りかかっているはずだ。にも関わらず、そんな出来事に遭遇した様子すら見せようとせ
ず、気丈に振舞ってしかも、いつまでも引き摺ったりはしない。私が見てきたのはこういった事例ばかりだった。

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